Reduction of Solar Heat Gain through Building Envelope by High Reflectivity Paint
【その2】数値解析による室温および熱負荷に関する検討
Part 2. Numerical Study on Room Temperature and Cooling Heat Load
正会員 ◯ 長澤 康弘*1、NAGASAWA Yasuhiro
同 近藤 靖史*2、KONDO Yasushi
同 大森 孝修*3、OMORI Takanobu
キーワード:高反射率塗料、日射遮蔽、数値解析
1 目的
前報1)では、高反射率塗料の日射遮蔽性能についての実験結果を報告した。
本報では実験で行なっていない条件や大空間建築物に高反射率塗料を塗布した場合等について数値解析による検討結果を示す。
2 数値解析概要
数値解析2)により室内温度を求めて以下の検討を行う。
- ①実験で対象としたモデルの形態、使用材料等の条件で室内温度を計算して実験結果と比較する。
- ②実験で対象とした各ケースにおいて換気回数を多くした場合の室内温度を計算して検討を行う。
- ③実験モデルの屋根面のみに高反射率塗料を塗布した場合をケース4として遮熱効果の検討を行う。
- ④大空間建築物に高反射率塗料を塗布した時の遮熱効果について室内温度および冷房負荷の検討を行う。
自然室温は外気、日射、換気などによる室の熱収支を基に計算を行った 2)。外界条件は前報1)に示した実験実施日の外気温度(10分毎の実測データ)、日射量(10分毎の日射量を計算により直散分離)を用いた。屋外の総合熱伝達率は20.9[W/㎡・K]、室内の総合熱伝達率は9.3[W/㎡・K]とする。夜間放射は考慮していない。自然室温計算に使用した材料の熱特性を表1に表す。また冷房負荷計算は年間熱負荷計算プログラム(HASP/ACLD/8501) 3)により計算を行った。

表1 計算に用いた熱特性

表2 計算ケース (実験モデルの場合)
3 数値解析結果及び考察
3.1 室内温度の実験結果と計算結果の比較
図1に室内温度の計算結果を示す。室内温度実験結果(前報図5)と比較すると、夜間放射を考慮していないため計算結果は夜間の室内温度が2〜3℃高いが、換気回数0[回/h]、8[回/h](図1(a)(b))ともに昼間はほぼ対応する注1)。

図1 室内温度計算結果
3.2 換気回数を多くした時の室内温度の検討
図2に換気回数の違いによる平均室内外温度差の計算結果を、図3に換気回数15[回/h](換気量約50[㎥/k]に相当)の時の室内温度の計算結果を示す。図2より換気回数が多くなると各ケースの温度差が小さくなり、外気温度に近づくことが確認できる。換気回数15[回/h]での日中の室内温度は、ケース1では換気を行なわない場合と比べて2℃程度下がり、ケース2及びケース3では外気温度との差は1〜2℃程度になる。すなわち、換気量が多い場合は高反射率塗料による効果は相対的に小さくなる。

図2 換気回数の違いによる室内外温度差の計算結果(9月28日10:00〜14:00)

図3 換気回数15(回/h)室内温度計算結果(9月19日)
3.3 ケース4における遮熱効果の検討
図4にケース4(実験モデルの屋根面のみに高反射率塗料を塗布した場合)の室内温度の計算結果を示す。ケース4の室内温度は外気温度と比較すると日中約7℃高く、ケース1より約3℃低い。このことから建物の屋根面のみに高反射率塗料を塗布した場合でも、ある程度室内温度が下がることが確認できた。

図4 ケース4の室内温度計算結果(9月19日 換気回数0(回/h))
3.4 大空間建築物における検討
図5に示す体育館あるいは倉庫などに大空間を想定した計算モデルを対象に、表3に示す3種類の計算ケースについて自然室温および空調を行った場合の熱負荷の計算を行った。自然室温の計算の際には換気回数5[回/h](換気量75000[㎥/h]に相当)とした。図6に自然室温の計算結果を示す。ケースA(断熱材なし、高反射率塗料なし)の自然室温は外気温度より日中、約5〜6℃高く、ケースB(断熱材あり、高反射塗料なし)は外気温度より約2〜3℃高い。ケースC(断熱材なし、高反射率塗料あり)は外気温度との差が約1℃となり、ほとんど差がない。図7に夏期(7〜9月合計)の冷房負荷計算結果を示す。注2)
ケースCの場合、ケースAの場合より約45%ほど冷房負荷は小さく、ケースBの場合とほぼ等しい冷房負荷となる。

表3 計算ケース(大空間モデルの場合)

図5 計算モデル概要(大空間モデルの場合)

図6 自然室温計算結果(大空間モデルの場合)(9月19日 換気回数5(回/h))

図7 夏期(7〜9月合計)の冷房負荷(床面積辺り)
4 まとめ
本研究から以下のことが確認できた
- ①換気を多く行うことができない建物ほど高反射率塗料の効果が期待できる。
- ②屋根面のみに塗布した場合でもある程度室内温度の上昇を抑えることができ、遮熱効果が期待できる。
- ③大空間建築物(体育館、倉庫など)を想定したモデルでは高反射率塗料を用いる場合、用いない場合や断熱材を用いた場合より室内温度の上昇を抑えることができる。また冷房負荷は高反射率塗料を用いない場合と比べて約45%小さくなる。
注1)9月19日の外界条件を使用した室内温度の計算結果(図1(a))は午後2時以降日射量の変動が激しく、10分ごとの実験データではその変化に対応しきれていない。したがって、実験結果との差が大きい可能性があるが、日中の温度に関してはほぼ対応している。また9月28日の実験ではケース2の換気量が少なかった可能性があり、実験結果の室内温度がやや高くなったと考えられる。
注2)冷房負荷計算において対象地域は東京とする。また計算条件は空調運転時間帯8時〜18時、室使用時間帯9時〜18時、在室者50人、換気量1500㎥/h(換気回数0.1回/h)、空調設定湿度は26℃、55%RHである。
<謝辞>
本研究の一部は東急建設(株)との産学協同研究の一環として行った。ここに関係者各位に謝意を表す。
<参考文献>
1)大森・近藤・長澤:高反射率塗料の遮熱性能に関する研究(その1)建築学会大会梗概集(1997.9)
2)宇田川:空気調和計算法 オーム社(1986)
3)松尾:HASP/ACLD/8501解説 日本建築設備士協会(1985)
*1武蔵工業大学 院生 Graduate Student Musashi Inst. of Tech
*2武蔵工業大学 助教授・工博 Assoc. Prof.,Musashi Inst.of Tech, Dr.Eng
*3三井ホーム(当時、武蔵工業大学学生) Mitsui Home Co.,Ltd
- 1.高反射率塗料の遮熱性能に関する研究【その1】外壁の日射反射率と自然室温・冷房負荷に関する検討 >>ダウンロード
- 1.高反射率塗料の遮熱性能に関する研究【その2】数値解析による室温および熟負荷に関する検討 >>ダウンロード