An observarion on the performance of hi-albedo paint for the mitigation of urban thermal stress
- 新津 潔(科学技術振興事業団), Kiyoshi NIITSU(CREST,JST)
- 深田 晋一(慶應技術大学・院), Shin-ichi FUKADA(Keio Univ.)
キーワード:ヒートアイランド、アルベド、緩和、バンコク、塗料
Keywords:heat island, albedo, mitigation, Bangkok, paint
1 はじめに
著者らは1997年よりバンコク市内および郊外に7カ所の観測地点を設置して気象観測等を継続している。これまでにバンコクのヒートアイランド現象について報告した。また、乾季のうち低温期よりも高温期の方がヒートアイランド強度は大きいという観測結果も報告した。本報ではバンコクのサーマルストレス緩和策の一つとして、高アルベド塗料(商品名「サーモシールド」)を家屋の屋根面に塗布するという対策に関して、従来塗装との比較実験を実施した。
2 実験方法
バンコクのAIT(アジア工科大学院)キャンパス内に、同一素材、形状、大きさの実験家屋を2棟建築し、一方の屋根面に高アルベド塗料を、一方に通常塗料を塗布した。塗色はバンコクで普及している緑色とし、実験の前半と後半とでそれぞれ濃緑色(塗料用標準色見本 Y45-60D x 近似色)と淡緑色(塗料用標準色見本 Y42-30H 近似色)とに条件を変更して計測を実施した(図1)。観測項目は室内気温(床面高度1.5mと3m)、屋根面の放射収支(短波、長波)、屋根面から室内への熱貫流と屋根裏面表面温度である。気温観測に際しては室内を締め切りの状態とし、サーモレコーダを室内中央の床面高度1.5m、3mに設置した。屋根裏面表面温度計測に際しては、サーモレコーダを屋内側の屋根裏面に接して設置した。放射収支計はKipp&ZonenのCNR-1を東側屋根面上90cmの位置に設置した。熱流計はREBSのPHF-01を屋内側の屋根裏面に接するように設置した。また、サーモグラフィ(Avio TVS-600および日本電子JTG-6100)と放射温度計(ミノルタ 505)を使用して屋根の表面温度を随時計測した。室内気温は15分間隔で記録した。観測は最高温期の3月上旬から6月中旬まで継続して実施した。
3 結果および考察
当初の塗布色は濃緑色であったが、比較のため4月末に淡緑色に再塗装した。屋根面からの上向き短波放射は、濃緑色で2.8倍、淡緑色で1.9倍高アルベド塗料の方が大きい。一方、通常塗料の場合でも、濃色から淡色への変更によって上向き反射特性が3倍程度向上した(表1)。通常塗料を使用した屋根の方が表面温度は高く(図2)、室内側屋根温度は12:00pmの平均値で、濃緑色の場合は2.77℃、淡緑色の場合は3.39℃高い結果となった(図5)。同時に屋根面から室内への熱貫流は濃緑色で32%、淡緑色で20%高アルベド塗料の方が小さい。これは濃色から淡色への変更で反射特性が向上するためと考えられる(図6)。また、床面高度1.5mの室内気温差は12:00pmの平均で、濃緑色の場合には1.32℃、淡緑色の場合には、1.62℃となった。床面高度3mの室内気温差は濃緑色の場合1.71℃、淡緑色の場合1.90℃となった(表2)。いずれの場合にも高アルベド塗料の方が室内気温は低い。濃色と淡色の比較は実験時期が1ヵ月ずれたため、今後の課題である(図3,4)
今回の実験では、バンコクの住宅をモデルとした家屋を建設、観測したが、高アルベド塗料を屋根に塗布することで、空調設備による電力消費を軽減できることが予想される。
実験に際しては、締め切りの室内が非常に高温となるため、観測機器の冷却や停電対策など、バンコク特有の観測の工夫が必要であった。
4 謝辞
今回の実験では(株)長島特殊塗料に高アルベド塗料および通常塗料を特別に無償で提供していただきました。記して感謝致します。
本研究は化学技術振興事業団戦略的基礎研究推進事業「都市ヒートアイランドの計測制御システム」研究プロジェクトの成果の一部である。
5 参考文献
- 5.サーマルストレス緩和のための高アルベド塗料の性能検証実験 >>ダウンロード