Reduction of Solar Heat Gain through Building Envelope by High Reflectivity Paint
【その1】外壁の日射反射率と自然室温・冷房熱負荷に関する検討ー
Part 1. Study on Relationship Between Reflectivity Solar Radiation and Room Temperature
学生会員 ◯ 長澤 康弘(武蔵工業大学)、 NAGASAWA Yasuhiro
正会員 近藤 靖史(武蔵工業大学)、KONDO Yasushi
正会員 大森 孝修(三井ホーム、当時武蔵工大学生)、OMORI Takanobu
同 榎本 由暁(ダイダン、当時武蔵工大学生)、ENOMOTO Yoshiaki
1 序
日射熱などの侵入を軽減し、室内冷房熱負荷を小さくする方法として、建物外被の日射反射率を高めることが考えられる。
この具体的な方法として、高反射率塗料(図1及び表1参照。日射反射率0.85)を塗布した場合について以下の検討を行ったので報告する。
- ①住宅の屋根に塗布した場合の実測
- ②簡単な模型実験
- ③数値計算による各種条件の検討

図1 高反射率塗料の概念
高反射率塗料:弾性アクリルエマルジョンに超微細な中空セラミックが配合された塗料。日射反射率が0.85と非常に高く、日射遮蔽性能に優れる。また長波放射率は0.9、熱伝導率は0.25[W/m・K]程度である。

表1 高反射塗料等の遮熱性能
2 住宅を対象とした実測
横浜市内の住宅について、高反射率塗料を屋根に塗装する前後の実測を行った。図2に測定点を、表2に測定項目及び測定方法を示す。

図2 温度等の測定点(住宅における実測)
2.1 屋根表面・屋根裏空気温度
高反射率塗料を塗装する前の屋根表面(図3(b))の最高温度は約66℃に達するのに対して、塗装後(図4(b))では約58℃に抑えられている。また屋根裏表面温度に対応して屋根裏空気温度も高反射率塗料を塗布する前と比べて日中約10℃低くなる。
2.2 室内温度
塗装前の室内温度(図3(c))は日中、外気温度より約1〜2℃高くなるのに対して、塗装後(図4(c))は外気温度より約1〜5℃低い値を示した(注1)。

表2 測定項目および方法(住宅における実測)
3 模型実験による検討
表3に示す3種類の外被の仕様を想定し、図5に示す模型(1.5×1.5×1.5m)を作成して屋外に設置した。ケース1は鉄板で構成される室模型、ケース2は断熱された室模型、ケース3は高反射率塗料を塗布した室模型(断熱材なし)である。換気回数0[回/h]と8[回/h]の場合を設定した。測定項目等を表4に、測定点を図6に、検討に用いた日の外界条件を表5に示す。

図5 室模型設置状況

図6 温度の測定点等
3.1 自然室温
図7に自然室温の結果を示す。ケース1は日中、外気温度に比べて室内温度は約10℃以上高くなった。これに対してケース3は約1〜3℃の上昇に抑えられていた。ケース2も室内温度の上昇が抑えられていたが、ケース3より2〜4℃高くなる。

図7 自然室温の実験結果
3.2 模型内外の表面温度
図8に屋根表面温度を、図9に模型内外の表面温度等を示す。ケース3ではケース1、2に比べて外側表面温度は低く、特に直達日射を多く受ける屋根面・南面でその差は顕著で、日中10℃以上低くなる。
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図9 模型内外の表面温度等の実験結果
4 数値計算による検討
数値計算1)により自然室温・冷房熱負荷を検討する。自然室温は貫流熱、日射、換気などによる熱収支を基に計算した。外界条件は表5に示した実験実施日の外気温度、日射量(10分毎の日射量を直散分離)を用いた。夜間放射は考慮していない。冷房負荷計算では年間熱負荷計算プログラム(HASP/ACLD/8501)2)を用いた。本計算に使用した材料の熱特性等を表6に示す。
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- ①高反射率塗料を建物外側に塗布することにより日射熱がされ、外側表面温度・室内温度の上昇が抑えられる。
- ②換気量が小さい建物ほど高反射率塗料の効果が期待できる。
- ③大空間建築物(体育館、倉庫)のモデルについての負荷計算の結果、高反射率塗料の高価による冷房負荷の減少が期待できる。
- ①高反射率塗料を建物外側に塗布することにより日射熱がされ、外側表面温度・室内温度の上昇が抑えられる。
- ②換気量が小さい建物ほど高反射率塗料の効果が期待できる。
- ③大空間建築物(体育館、倉庫)のモデルについての負荷計算の結果、高反射率塗料の高価による冷房負荷の減少が期待できる。
4.1 自然室温の計算結果
図10に自然室温の結果を示す。実験(図7)と比較すると、夜間放射を考慮していないために夜間の室内温度は2〜3℃高いが、昼間はほぼ対応する(注2)。計算結果においても実験結果と同様に、ケース1では日中の室内温度が外気温度より10℃以上高くなるのに対し、ケース2(断熱材貼付)やケース3(高反射率塗料塗布)の場合は室内温度上昇がかなり抑えられている。

図10 自然室温の計算結果
4.2 換気回数を多くした場合の検討
室内と外気の温度差が換気回数によってどのように変わるかを計算した結果を図11に示す。換気回数が多くなると各ケースとも室内温度は外気温度に近づき、高反射率塗料による効果は相対的に小さくなる。

図11 換気回数と室内外温度差の関連
4.3 大空間建築物における検討
図12に示す体育館あるいは倉庫などの大空間を想定した計算モデルを対象に、表7に示す4種類のケースについて自然室温を計算し、また冷房熱負荷の計算を行った(注3)。自然室温の計算の際には換気回数5<回/h>(75000[㎥/h]に相当)とした。図13に自然室温の結果を示す。ケースAの日中の自然室温は外気より約5〜6℃、ケースBでは約2〜3℃ほど高い。ケースCでは外気温度との差が約1℃程度である。ただし、ケースD(断熱材+高反射率塗料塗布)の場合はほぼケースCと同様である。当然のことながら断熱材の効果と高反射率塗料の効果は相加的ではない。
図14に夏期(7〜9月合計)の冷房負荷計算結果を示す。ケースCの場合、ケースAと比較して約45%ほど冷房負荷は小さい。またケースB,C,Dの熱負荷はほぼ同程度であった。

表7 計算ケース(大空間モデル)

図12 計算モデル概要(大空間モデル)

図13 自然室温の計算結果(大空間モデル)

図14 夏期の冷房負荷(床面積辺り熱負荷の7〜9月の合計)
5 まとめ
以下のことが確認できた。
注1) 実測は住宅の2階を対象に行なったが、換気量や隣室(1階部分など)の条件が測定日などによって異なる。従って、高反射率塗料の塗布前後の比較は必ずしも同等な条件で行なっているわけではない。一方、模型実験による比較は3つの模型を屋外のほぼ同条件の位置に置いて比較している。
注2) 9月28日の実験ではケース2の換気量が少なかった可能性があり、実験結果の室内温度がやや高くなったと考えられる。
注3) 冷房負荷計算において対象地域は東京とした。また計算条件は空調運転時間帯8〜18時、室使用時間帯9〜18時、人数50人、換気量1500㎥/h(換気回数0.1回/h)、空調設定温湿度は26℃、55%RHである。
<謝辞>
(株)ハウステック・深江典之氏、同・青洋一氏、長島特殊塗料(株)・長島正季氏をはじめ多くの方々に御協力を頂いた。また本研究の一部は東急建築との産学協同研究の一環として行なった。ここに関係者各位に謝意を表す。
<参考文献>
1) 宇田川:空気調和計算法 オーム社(1986)
2) 松尾:HASP/ACLD/8501 解説 日本建築設備士協会(1985)
- 1.高反射率塗料の遮熱性能に関する研究【その1】外壁の日射反射率と自然室温・冷房負荷に関する検討 >>ダウンロード
- 1.高反射率塗料の遮熱性能に関する研究【その2】数値解析による室温および熟負荷に関する検討 >>ダウンロード