10.実測による高反射率塗料の遮熱性能に関する研究

Field Measurement on Reduction of Solar Heat Gain by High Reflective Paint

  • 正社員 ◯ 大木 泰祐*1、OHKI Taisuke
  • 同 近藤 靖史*2、KONDO Yasushi
  • 非会員 光本 和宏*3、MITSUMOTO Kazuhiro

キーワード:高反射率塗料 遮熱性能 実測 クールルーフ

1 はじめに

建物外被の遮熱性能を向上させる方法のひとつに、日射反射率の高い塗料(以下、高反射率塗料と記す。図1を塗布し、建物外被が受ける日射熱量を軽減することが考えられる。本研究では実測により、灰色の高反射率塗料を塗布した屋根とコンクリートの屋根、一般塗料を塗布した屋根の熱性能を比較する。

図1 高反射塗料の概念図

 

対象建物概要および換気条件など

表1 対象建物概要および換気条件など

 

 

2 実測概要

2.1 対象建物

実測対象は、東京都立足立区の小学校(廃校)の屋上および最上階(3階)の教室とした 註1)

2.2 測定期間および測定ケース

写真1のように高反射率塗料を塗布した屋根 註2)、塗料なし(コンクリート面)の屋根、一般塗料を塗布 註3)した屋根の表面温度や屋根裏・教室内温度などを夏期に測定した。また、自然換気を行う場合と行わない場合の2ケースを比較した。既往の研究文1) 文2)では、白色・黒色の高反射率塗料を適用した場合について研究してきたが、本研究では灰色(N6)の塗料を用いた。高反射率塗料および一般塗料の分光反射率註4)を図2、表2に示す。

小学校屋上面

写真1 小学校屋上面

 

各塗料の分光反射率

図2 各塗料の分光反射率 註4)

 

画と量の分光反射率

表2 各塗料の分光反射率 註4)

2.3 測定項目および測定点

測定位置、測定項目および測定方法を表3に、また測定点を図3に示す。

測定位置概要

図3 測定位置概要 単位: mm

 

表3 測定項目、測定位置および測定方法

 

3 夏期実測の結果

日射量および外気温の値が比較的近い日を各測定ケースから1日ずつ選択し比較をする。検討に用いた測定日とその日の外界条件などを表4に示す。

測定代表日の外界条件

表4 測定代表日の外界条件註5)

3.1 屋根表面温度の比較

図4より、塗料なしのコンクリートの屋根面と比較して高反射率塗料を塗布した屋根面では温度上昇が大幅に抑制されている。一般塗料を塗布した屋根面の温度も若干低く抑えられているが、高反射塗料との温度差は正午前後において10〜15℃となる。また日没後はすべての測定点において温度が下降するが、高反射率塗料は塗料なしや一般塗料に比べ1〜3℃温度が低くなっている。このことから高反射率塗料には日射熱の蓄熱軽減効果があることが伺える。

屋上表面温度および日射量

図4 屋上表面温度および日射量

3.2 屋根裏表面温度の比較

屋根裏部分は高反射率塗料の有無の差が顕著であるが、図5より特に躯体表面温度においては、ピークにあたる19時前後など、高反射率塗料を塗布した教室のほうが5〜7℃低く抑えられている。屋根裏表面温度における換気の有無による差異はほとんどない。

屋根裏表面温度

図5 屋根裏表面温度註5)

3.3 教室空気温度の比較

図6より、塗料による空気温度の差異は最大で2〜3℃と比較的小さい。これは、測定空間が小学校の教室であったために、窓ガラス面が広く、窓からの日射熱吸収量が相対的に大きかったことが影響したと考えられる。換気時間帯(11時〜14時)における高反射率塗料を屋上面に塗布した教室の室内空気温度は、外気温に近づき、換気を終えた14時以降急激に上昇し、最高温度は換気の有無に関わらず、16時過ぎにみられる。その後日没までの間急激に下降するが、翌日までの温度変化は緩やかである。グローブ温度についてもほぼ同様の温度変化がみられたため、図は省略した。

教室の空気温度

図6 教室の空気温度註5)(ポールB FL+1100mm)

4 まとめ

本研究では、夏期実測から得られた測定データを基に灰色高反射率塗料の遮熱性能を検討した。高反射率塗料を塗布した場合、屋根表面温度は日中の晴天時で塗料なしの場合と一般塗料塗布の場合に比べ約10℃以上低くなった。また、日没後においても屋根裏表面温度に顕著な差が見られることから、高反射率塗料は日中において建物躯体への日射熱の蓄熱を低減する効果があると考えられる。


[謝辞]
本研究における実測を行うにあたり、NTTアドバンステクノロジ(株)、鹿島建設(株)技術研究所・大日本塗料(株)、(独)土木研究所・長島特殊塗料(株)・(株)NIPPOコーポレーション、長島特殊塗料(株)、ロンシール工業(株)(五十音順)の方々には、塗料を提供していただきました。また、東京都ならびに東京都足立区の関係者の方々、武蔵工業大学大学生米山明恵氏、永森智美氏(当時)には多大なる御協力を賜りました。ここに記して深く感謝の意を表します。

  1. [註訳]
  2. 註1) 実測対象建物の屋根には断熱材が使用されていない。このような場合、高反射率塗料の効果が現れやすい。
  3. 註2) 本実測では、塗料A〜Eの5種類の高反射率塗料(写真1参照)について測定を行った。屋上および最上階(3階)の各5教室の測定結果が得られているが、本報では代表塗料として塗料Bの実測結果を示している。
  4. 註3) 一般塗料は、ホームセンターなどで市販されている灰色の塗料を使用している。
  5. 註4) (財)建材試験センターで測定されたデータ(2004年9月)である。
  6. 註5) 外気温は実測データが直達日射の影響をやや受けていた為、実測場所の近隣で東京都環境局が観測しているMETROSデータを示した。
  1. [参考文献]
  2. 文1) 近藤・長澤・入交:高反射率塗料による日射熱負荷軽減とヒートアイランド現象緩和に関する研究:空気調和・衛生工学会論文集No.78(2000.7), pp15-24
  3. 文2) 近藤・長澤・大南:黒色高反射率塗料による住宅屋根の日射反射率の性能の向上:日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸)D-2環境工学Ⅱ(2002.8), p117-118

*1武蔵工業大学大学院 修士課程 Graduate Student, Musashi Institute of Tachnology
*2武蔵工業大学 教授 博士(工学) Prof., Musashi Institute of Technology, Dr. Eng.
*3東京都環境局 修士(工学) Tokyo Metropolitan Government, Bureau of Environment, Mr Eng.

日本建築学会大学学術講演梗概集・2005年
カテゴリー: 各種データ・論文

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